スガ旅

夫婦で世界の大自然を歩いた旅の記録

私たちのJMT(ジョンミューアトレイル)⑫

23日目(DAY137)

Bighorn Plateau-Guitar Lake上(9.8マイル/15.8km)

朝6時に起床。テントを開けるともう空は明るくなり始めていました。オマールも外に出て日の出を待っている様子。

目の前の池は鏡のように静かで、山々を美しく写し出していました。

夫が起きてすぐに水を汲んでくれたので、浄水して朝ごはんの準備です。
朝ご飯を食べていると、どこからともなく三脚を持ったおじさんが現れ、急に撮影を開始し出しました。

オマールが池の水を汲もうとすると、カメラマンがストップをかけました。今ベストコンディションだから後にしてくれと。

こちらからすれば水を汲まなくては朝ごはんも食べられないし、何だか勝手な人だな、と思いました。

いつも穏やかで優しいオマールが憤慨しており、おじさんが立ち去った後に、「美しい朝なのにさっきは嫌な場面を見せてしまってごめんね」と謝りに来ました。いやいやいや!オマールは何も悪くないよ!と言ってオマールを元気づけました。

今日はギターレイクの少し上、トレイルクレスト手前で仮眠をし、夜中にマウントホイットニーにアタックする予定です。10マイルほどの行程ですが、のんびり行く事にして9時頃に出発。


砂漠に咲く花が可愛かった。部屋の壁紙にしたい。

1時間ほど歩くと分岐に着きました。マウントホイットニーまで11.7マイル!本当によくこんなところまで歩いてきたな…。

お昼休憩に残りのフリーズドライを食べます。少しでも軽くしていきたい。

マウントホイットニーまで8.3マイル。ついに残り10マイルを切りました。ちょっとだけ寂しい。

クラブツリーのレンジャーステーションの分岐に着きました。ここにはポータブルトイレが置いてあり、1人1個持つことが必須です。私たちはヨセミテで貰ったものがあるのでスルー。

マウントホイットニー山域に入ると排泄物は持ち帰らなくてはいけません。標高が4,400mと高いので、分解されないのでしょうか。


私たちの様子を伺うマーモット。

ケイティたちと抜きつ抜かれつで歩きながら、ギターレイクに到着です。

ギターレイクからマウントホイットニーまでは水の補給場所がないため、ギターレイクがラストウォーターポイントとなります。が、夫のJMTアプリで見たところ、ギターレイクの上にも水場がありそう。

ギターレイクでケイティ夫妻と別れ、一段上の水場で水を持てる分だけ目一杯汲み、さらに上のテントサイトまで担ぎ上げました。結局テントサイトにも池があり、がっくり…。


ギターレイクはギターの形。

上のテントサイトには先客がいましたが、3張くらいできるスペースがあったのでトレイルに近い場所にテントを張りました。標高は高いけどフライシートなしに挑戦。


ホイットニーを眺めながら昼寝する夫。

夫が奥にテントを張っていたおじさんに話しかけに行き、どれがマウントホイットニーかと尋ねたところ、私たちのテントの正面がまさにそうでした。

彼の名前はブライアン。ホイットニーポータルにトラックを置いていて、下山したらシアトルまで帰るとのこと。「もし足がなかったらローンパインまで乗せてくよ!」と言って頂き、本当に会う人会う人優しい人ばかりだなと嬉しくなりました。

夜ご飯にピーナッツバターサンドを3枚食べ、テントに入ります。


マウントホイットニーを眺めながら仮眠。まだ明るい。

10時頃、近くで足音が聞こえてむくっと起き上がると、若いハイカーが水を汲みに来ていました。「何時に起きるの?」と聞かれ、0時かな〜と答えると、「早すぎない?俺は1時にする!」と言っていました。

緊張のせいかお腹がゴロゴロするので、ストッパ下痢止めを飲みました。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):15.6km


24日目(DAY138)JMT最終日

Guitar Lake上-Mount Whitney-Whitney Portal(17マイル/28km)

深夜0時起床。と言っても、興奮してほぼ眠れませんでした。

フライシートなしのメッシュだけのテントにして大正解。寝袋に入りながら、目を開けると無数の流れ星が見えます。
JMT最後の夜に相応しい、とても静かな美しい星空。

ホイットニー山頂付近を眺めると、すでに何個かヘッドライトの明かりが見えます。さあ、いよいよだ!

私がお湯を沸かしてご飯の準備をしている間に夫はテント内の片付けをし、二人で最後のフリーズドライを食べます。コーヒーも飲んで騒ぐ心を落ち着け、テントを撤収。

午前2時、出発です。

明るいうちにトレイルのチェックをしていなかったせいで、しばらくトレイルを見つけるのにウロウロしてしまいましたが、何とか合流。すぐにホイットニーポータルジャンクションへの登りが始まります。

寒さに凍えながらゆっくりゆっくり慎重に登ります。ヘッドライトの明かりが頼りで足元しか見えませんが、すぐ横は崖。石を落とさぬよう、静かに丁寧に足を運びます。高山病の心配もまだ捨てきれないので、水分補給と休憩をこまめにとります。

午前4時、ジャンクションに到着。
ここにザックをデポし、マーモット対策のためザックからベアキャニスターを取り出し、においのするものは全てベアキャニスターに入れてザックと並べて置きます。

準備をしているとケイティとブレンデンも到着。同じベースキャンプだったブライアンも小休憩して先に進みました。

午前4時半、アタックザックに水と防寒着と雨具、ナッツを入れて、サミットに向けて出発です。

さっきよりも険しい道になってきていますが、周りが暗いのでどのくらいの高さにいるのか、横がどのくらい切れ落ちているのか、あまり意識せずに登れました。とにかく星がどんどん近づいて来るような感覚でした。

午前5時半、少しずつ明るくなってきました。頂上まであと少し。いろんな思いが涙と一緒に込み上げてきて、あと10歩、あと9歩、と一歩一歩大切に心を込めて進みます。

「We made it!!」

両手を広げて頂上で待っていたケイティが抱きしめてくれた瞬間、自分でもびっくりするほど大粒の涙が溢れ出てきました。

標高4,418m。ヨセミテから340km。本当にしんどかったし長かった。私にとってはとてつもなく過酷な24日間だった。途中何度も無理なんじゃないかと弱気になったけど、そんな私でも頑張ってついにゴールできた。そして、今までの辛さがこの景色ですべて吹き飛んで行く。

JMTサウスバウンドのゴールはここマウントホイットニーの頂上。私たちのJMTは終わったのです。

放心状態の私に「もしかしてモモ…?」と横から声をかけて来たのは、MTR手前からずっと会えずにいたヨシュアとクリスティーナでした。

彼らは夜中のうちに山頂にアタックし、ここで寝袋に入りながら夜を明かしていたのです。久々の再会で嬉しすぎてみんなで抱き合い、お互いを称え合いました。みんな本当によく頑張ったね…!

朝日が顔を出し始めるにつれ、みんな最後のエネルギーを使い果たすくらいテンションが上がっていきます。あまり寝ていないはずなのに、一人一人の表情がキラキラと輝いています。

ケイティはユニコーンのコスチュームに着替え(JMT中ずっと担いで来たの…?)、家族とFaceTime。

昨晩ベースキャンプで声をかけて来たマイルズは、オレンジ色の朝日を見つめながら「It's time...!」と呟き、横に居た私に一眼レフを渡し、「撮影を頼む」と言って服を脱ぎ始めました。


周りから"brave man"と呼ばれた全裸のマイルズ。

ヨシュアとクリスティーナを撮影したらモデルが良すぎて何かの広告風になったり。

数時間前に出会ったブライアンももうファミリー。

全員が家族のように一つになり、抱き合い、喜びを分かち合った最高の朝でした。この24日間、雨は一度も降らず、熊にも遭遇せず、怪我も病気もせずにここまで来ることが出来たのは、運と友人に恵まれたこと、そして何より夫が支えてくれたおかげです。

マウントホイットニー頂上には小屋があり、小屋の前に記帳ノートがあります。私は出会えたハイカーやレンジャー、協力してくれた全ての人々に敬意を表しました。

JMTを終えて頂上を堪能した後は、ホイットニーポータルまでの長い長い下山が始まります。
標高4,418mから一気に標高2,545mへ。距離にして17km。

午前7時、下山開始。まずはジャンクションまで戻り、デポしていたザックを取りに行きます。

夜中に歩いた時は全く分からなかったけれど、とんでもない所を歩いて来たな…と急に怖くなります。

24日間を過ごしたシエラネバダ山脈を振り返ります。

なんて美しいんだろうか…。言葉になりません。

午前8時過ぎ、ジャンクションに到着。人も増え始めていたので、ある程度降りてから休憩をする事に。

ジャンクションからトレイルクレストまでは若干の登り。トレイルクレストからは残酷なほどの下りが続きます。

午前10時半、長いスイッチバックからの解放。あんな高いところから2時間かけて急斜面を降りてきました。ようやく休憩できそうな場所でコーヒーを入れます。


後から降りて来たケイティ夫妻も同じ場所で休憩。

JMTからの解放と、下で待ち構えている文明社会。頑張って降りるぞ!

深夜2時から歩きっぱなしのせいか、足首の痛みに加えて足がもつれ始めます。夫が先に降りている中、途中道を間違えて違うルートへ進んでしまって迷子になる私。
さらには小さな小川で滑って転び、全身びしょぬれ&肘から流血。最後の最後で何やってるんだろう…。

私が降りて来ないことに気付き途中で待っていた夫は、泥だらけ&血を流し、足を引きずりながら降りてきた私を見て「え…?」とギョッとしていました。

午後2時、ついにホイットニーポータルに到着!睡眠不足の中の7時間の下り、よく頑張った…!

グリルの外で待ち構えていたケイティ&ブレンデンと再会し、迷ったあげく転んだことを笑顔で報告。本業がナースのケイティが手当してくれました。

グリルにハンバーガーを買いに行き、コーラとビールで乾杯!JMTが終わったというのに、ケイティから「あんたたちのトレイルネームを考えたの!タロウは“ゴープロ”、モモは“バーガー”ね!」と言われました。ちなみにケイティは“フィッシュテイル”、ブレンデンは“ケアベア”、オマールは“タンク”というトレイルネームです。

ブライアンもテラスに来て、みんなでビールを飲みながらあれこれと思い出話。

その後、ケイティ夫妻にホイットニーポータル麓のローンパインという町まで送ってもらいました。ブレンデンは、「うちはすごい狭いんだけど、もし良ければ一緒に帰ってうちに泊まらない?」と言ってくれて、こんなに疲れて久々に家に帰れるというのに、なんて優しい人なんだと感動しました。
私たちはローンパインのホステルに山道具以外の荷物を送ってあったので、ありがたいけどホステルに泊まるよ、と言うと、「LAを離れる前に必ずもう一度会おう!」ということになり笑顔で別れました。

ホステルは古い建物と設備でしたが、個室を予約できていたため気を使わずにゆっくりできました。インデペンデンス以来のシャワーでしたが、思ったよりも身体は汚れていました。荷物も無事に受け取り、明日からは今まで以上に大荷物です。

ホステル向かいにコインランドリーがあったので洗濯をしに行き、スーパーでしばらく食べられなかったオレンジとアイスを購入。
その道すがら、ギターレイク手前で少し話したソロハイカーに遭遇。彼も同じホステルのドミトリーに泊まるそうで、しばらく立ち話をしました。

乾燥機に洗濯物を突っ込み、夕ご飯に中華料理屋へ。注文前に店員さんが「1つの皿がもの凄くデカいの。よほど大食でなきゃ1皿で十分よ!」と親切に教えてくれて、夫と1皿をシェアしました。本当にデカかった。

終わった実感はまだ涌かず、明日からもう歩かなくていいことが信じられないまま、効きすぎる冷房の中で就寝しました。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):28km

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私たちのJMT(ジョンミューアトレイル)⑪

21日目(DAY135)

Onion Valley Trailhead-Kearsarge Pass-Bullfrog Trail-Forester Pass 手前(11マイル/18km)

なぜかほぼ眠れなかったけれど6時過ぎに起床。もったいないので朝再度ホットシャワーを浴び、狂ったように頭をたくさん洗いました。

7時から朝食のはずが、朝食会場がわからないので誰か来るまで外のテラスでココアを飲んで待ちました。
昨日一緒のシャトルだったドイツ人の彼も、場所がわからないので一緒に待機。

さらにアメリカ人の若い夫婦もコテージから出てきて「朝食会場どこ?」と聞いてきたので、わからないからとりあえずここで待ってると伝えると、「この前吊り橋のキャンプサイトで会ったよね!」と言われ、軽く挨拶をしたことを思い出しました。

昨日シャトルバスの時間を教えてくれたおじさんも部屋から出てきて朝食会場を探していると、「Dinning Room」と小さく書かれた部屋を発見!

開けてみると、宿のお母さんがキッチンにいて、「好きな席に座って!」と朝食準備が整っていました。アメリカ人夫婦の部屋が分からなかったので、外で「Breakfast!」と叫んでみたものの、出てこない。ドイツ人の彼がお母さんに「みんな朝食会場がわからないみたいだよ」と伝えてくれて、お母さんがみんなを呼びに行き、無事みんな朝食にありつけました。

朝食は一つのテーブルを囲んでみんなで頂くスタイルで、ベーグル、卵、ベーコン、フルーツ、オレンジジュース、コーヒーと盛りだくさん!
ベーグルをトースターで焼き、バターをたっぷり塗ってジャムも乗せて食べている間にお母さんが卵を焼いてくれました。ああ、幸せってこの事だ…。

朝食での話題はヒッチハイク。
昨日シャトルにいなかったおじさんもアメリカ人夫婦もヒッチハイクで降りて来たようで、オニオンバレーでのヒッチハイクはそんなに難しくないようでした。

お腹いっぱい朝食を食べ、5分で出発準備。慌てすぎて食器洗い用のスポンジをキッチンに忘れました。

ベアバレルに入りきらなかった物資を寄付して、急いで待機しているシャトルに乗り込みます。

心身ともに本当に癒されたマウントウィリアムソンモーテル。心の底からありがとう!

オニオンバレーのトレイルヘッドに向かいながら、またあそこに登るのか…と気が重くなります。キラサージパスまで何時間で登れるかな…荷物も重くなったし、夕方くらいになっちゃうかな…。

トレイルヘッドに到着したのが午前8時半。トイレなどを済ませ、8時50分に出発。

ここから昨日鬼のように下った道を、また登り返してJMTに戻らないといけません。

ドイツ人の彼と、「本当に本当に登りたくないね。でも行かないとね…」と言いながら登り始めました。

あれ?何だろう。調子がいい。

昨日はフラットな道もやっと歩いていたのに、今日は登りもある程度のスピードでさくさく登れる。

あっという間にドイツ人の彼と距離があき、夫と二人、スイスイ登って行きました。

1時間に1回休憩を取り、ふんだんにある行動食を食べ、12時前にはキラサージパスのてっぺんに到着。なんと3時間くらいで登ってしまいました。


お口で溶けて手で溶けないm&m'sは、ザックの中で溶けました。

自分でもびっくりするほど体力が回復していて、昨日の下りよりもむしろ今日の登りの方が楽だったことに驚きました。ザックの重さも全然気にならない。昨日までは単純にガス欠だったのか…。

パスで10分くらい休憩し、ブルフロッグレイクまで一気に下りました。

午後1時過ぎ、ブルフロッグレイクに到着し、抜群の場所でランチ休憩。ついに私待望のピーナッツバターサンドを食べられます。

ガスも水もあるし、コーヒーを沸かしてパンにピーナッツバターをたくさん塗って食べました。目の前は美しい湖。幸せ…!

一緒の宿だったアメリカ人夫婦が追いつき、「いい場所ね!私たちもここでランチ休憩していい?!」と言うので、もちろん!おいでよ!と言って一緒にランチタイム。

二人はロス在住の夫婦で、ケイティとブレンデン。とてもハッピーな仲良し夫婦で、ランチにトルティーヤを作っていました。

気になったので近くでじっと見ていると、大きなサラミを1切れずつご馳走してくれました。めっちゃ美味しい…!そして物乞いみたいでごめんなさい…!

お返しに「松茸のお吸い物」をあげると、何だかすごく喜んでくれて記念撮影。

残り4日だけど、また楽しい仲間が増えました。
二人と「また後で!」と別れ、JMTのルートに戻ります。

少し行った所で女性のレンジャーが待機していて、「パーミットはある?」と初めての検問となりました。すぐにパーミットを渡すと色々とシートに書き写していたので、きちんとチェックしているんだなあと驚きました。

「日本から来たのね!素敵!もうほぼゴールじゃない!あとちょっとだけど楽しんで行ってね!」と励まされ、記念撮影。

ピーナッツバターサンドが効いているのか、いつもならバテバテの時間だけどまだまだ体力が残っているので、目的地のフォレスターパス手前のキャンプサイトを目指します。

夫が前を歩いていて、何かを発見した様子。

「あれ、オマールじゃない?」

よく見ると確かにオマールっぽい人がだいぶ前を歩いてる…!前に会った時と変わらずゆっくり自分のペースで、時折立ち止まり写真を撮りながら。

急いで近くまで降りていき、「オマール!」と声をかけると、「タロー、モモ!」と振り返るオマール。

お互い感動して抱き合って喜びました。嬉しい!オマール無事だった!

「もうすっかりゴールしてるものと思っていたよ、何でここにいるの?」と聞かれ、昨日はインデペンデンスに泊まったことを話しました。

なんとオマールはヨセミテから一度もリサプライをしておらず、全日程の食糧を担いでいたのです。すごい…!そんな人他にいるでしょうか…!

ゴール予定は私たちより1日後だけど、今日のキャンプ地は同じくらいになるかも、とのこと。

久々の再会を喜び少し立ち話した後、また後でね!と別れました。ずっと心配していたので、本当にほっとしました。

明日のフォレスターパス越えに向けて少しでも近づいておきたい私たちは、その後も抜きつ抜かれつ、みんな同じくらいのペースで歩みを進めました。


仲良く大集合して休憩。

自分たちでも体力の回復具合に本当に驚いていて、きちんとエネルギーを取る事の重要性を体感しました。(とは言え、MTRからオニオンバレーまではリサプライが出来ないので、多くの人はオニオンバレー手前で飢えと戦うことになると思う。)

ケイティたちは焚き火が好きなので、焚き火が出来る限界の標高でステイ。私たちはそこから1時間ほど登り、目的のキャンプサイトへ。

ベアロッカーもある開けた気持ちのいいサイトで、川もすぐ裏にあります。

設営後、川で顔を洗ったりしているとオマールが到着!手を振ると気がついたようで、彼もここにステイすることになりました。

夕飯のフリーズドライを食べ終わったくらいにオマールがご飯を食べにやってきて、彼がベアバレルを2個持っていることを知りました。だから全期間の食糧を運べるのかと納得。ただ、めっちゃ重そう…。

オマールはイスラエル出身。ビーガンで、ベアバレルには大量のビーガンフードが入っていました。
以前エステリーナの家で頂いたフムスやシャクシュカ、ファラフェルが美味しかったのでその話をすると、オマール特製水で溶いて作るフムスを伝授してもらいました。


見た目はあれだけどとても美味しかった!

なぜJMTスルーハイクを決めたの?と聞いてみると、LA近郊に住むオマールはヨセミテには度々ハイキングに来ていて、その際にJMTの道しるべを見て、「これは何だろう…?」と興味を持ったのがきっかけだと話しました。また、昨年はホイットニーポータルからトレイルクレストの分岐まで登ってJMTに入り、途中から違うトレイルに入ったそう。マウントホイットニーにはまだ登ったことはないけど、「今まで登ったどのパスとも勝手が違う」と言っていて、確かに最後はパス越えではなく登頂なんだ…、と思い出しました。

オマールと再会出来て本当に良かった。今日は本当にいい一日だったなあ。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):18.2km


22日目(DAY136)

Forester Pass 手前-Forester Pass-Bighorn Plateau(9.5マイル/15km)

ちょっと寝過ぎて7時前に起床。
テントを出るとオマールはもう起きていました。

朝ごはんに味噌ラーメン。一人で1人前を食べられる幸せ…!

今日は最後のパス、フォレスターパスを越える予定。
私の人生初となる標高4000m。色んな人からフォレスターパスはきつかったと聞いていたので、大ボスを攻める気持ちで出発です。

今日もさくさく進めるかと思いきや、昨日ほどの馬力は出ず…。やっぱり昨日は朝ごはんに卵とベーコンを食べたのが大きかったのでしょうか。1時間ほど歩いて休憩。

どれがフォレスターパスなのかなーと、いつも通り疑いの目で岩山を眺めながら歩きます。
丘が出てきましたがこれがパスなわけがないので、これを越えたらまた何か出てくるのでしょう。もう騙されない。

なかなか姿を現してくれないフォレスターパス。どんどん標高は上がっていき、今までのパスくらいの標高の3600mくらいまで来ました。


宿のフリーボックスからもらったピーナッツバターのクラッカー。美味しい。

かっこいい岩山がぐんぐん迫ってきます。もう少しでしょうか。


振り返ると美しく広がるシエラの風景。

ついにパスをロックオン!3700mを越え、酸素が薄くなっているのを感じます。

パス直下に来ました。降りて来たハイカーに、「トレイルは雪で隠れているからストレートアップして!」と言われました。パスに人がいるのも見えます。

息が切れないよう、焦らずにじりじり登り詰め、12時40分にパス到着!初めての4000mにテンションが上がります。

休憩しながら下を眺めていると、ケイティたちもすぐに上がってきました。二人とも無事にパスに到着し、ハイファイブ!

パスでお昼を食べようかとも思いましたが、コーヒーも入れたかったので下の水場まで降りてからランチ休憩することに。

南側の斜面はかなり急で、北側から登れて良かった…と思いながら下山。地球以外の惑星のようなこの風景も、もうあと2日で終わるのか…。

小川の近くまで降りてランチ休憩。今日もコーヒーとピーナッツバターサンドです。幸せ。

ケイティ夫妻も降りて来たので、明日の行程の情報交換をしていると、彼らはホイットニーポータルに車を置いているとのこと。明後日の下山時間が一緒だったらローンパインまで乗せてくよ!と嬉しいお言葉を頂きました。
ホイットニーポータルからローンパインまでは交通の便がないので、ヒッチハイクをする予定でした。とても助かる…!

明日はギターレイクまで行って、夜中にマウントホイットニーに登ってサンライズを見るという二人。私たちも、ギターレイクでフルの水分補給をしてマウントホイットニー直下まで行っておきたい。

なるべくギターレイクに近づけるよう、今日はもう少し歩く事にしました。

フォレスターパスからの道はため息が出るほど美しく、何度も足を止めてしまいます。ああ、本当にここまで来られて良かった。


ついにサインに「MT. WHITNEY」の文字が!感無量!

パスから5マイルほど下ったところをケイティたちはキャンプ地としていましたが、私たちはそこからさらに1時間ほど歩き、ビッグホーンプラトーという丘の上に小さな池があるとても美しい場所を発見。ここでキャンプをすることにしました。

設営をしてゆっくりしていると、オマールが前を通過。手を振ると、オマールもトレイルから離れてこちらにやってきました。
3人で景色を眺めながら、ここすごく良い場所だよね、と言うと、「ベストだね…!」と、ここを気に入ったようでテントを張っていました。


パックトレインに手を振りました。

テントからマウントホイットニーを含む山々が美しく眺められる最高の場所。タダでこんな場所でキャンプ出来るなんて本当に贅沢です。そしてインディペンデンスでのリサプライ以来なんでも幸せに感じる…!

私たちのJMT最後のパス、フォレスターパスを越えたお祝いにステーキのフリーズドライ。

向かいの池には動物たちが水を飲みに来たりして、いつまでも眺めていられる心地よい時間を過ごしました。



夫が夜撮影したシエラの星空。


  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):18km

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私たちのJMT(ジョンミューアトレイル)⑩

19日目(DAY133)

Wood Creek Trail-Glen Pass-Bullfrog Lake Trail(11.3マイル/18.2km)

朝6時過ぎに起床。寒くてなかなかテントから出られません。

朝ごはんにインスタントラーメン一人前を半分ずつ食べました。今日は長い一日になりそうで、出発準備もなかなかはかどらず…。

朝8時半に出発。今日の行程は、グレンパス(標高3,635m)を越えてキラサージパストレイルの分岐まで下る予定。明日は待ち望んでいたリサプライ日で、オニオンバレーまで下ってそこからインディペンデンスの町まで降りるのです。VVRぶりのシャワー…!そして待ちに待ったピーナッツバターとポテチとコーラ!

インディペンデンスでの宿はあらかじめ予約しており、宿泊の他にリサプライ品の保管、洗濯、トレイルヘッドへの送迎込みのフルパッケージでお願いしています。サンフランシスコから送った私たちのバケツがもう宿に届いているはずで、その中にはしばらく飲んでいないコーヒーや、クラッカー、ラーメンなんかも入れています。

トレイルヘッドへの迎えが午後3時のはずなので、それまでに私たちも下山しないといけません。当初の行程では今日はグレンパス手前のレイレイクスで宿泊予定でしたが、明日パスを越えて3時までにトレイルヘッドに着ける自信がなく、VVRのフェリーの二の舞を踏まぬよう、今日中にパスを越えることにしました。

標高差1000m以上の登りですが、ピーナッツバターが手を振って待っているような気がして頑張れます。
昨日は最下部まで降りて来られたので、今日は出発と同時に登り始めます。

急な登りとフラットな道を繰り返し、確実に高度が上がってきています。1時間ごとに休憩を取り、残しておいた1本のエナジーバーを二人で分けて食べます。

午後1時、当初のキャンプ予定地だったレイレイクスに到着。順調!ここでお昼休憩を取ることにします。


川と違って流れのない湖では水が汲みにくい。

インスタントラーメン一人前を、また二人で分けて食べました。「一杯のかけそば」みたいだね、と話しながら、やはり私が多めに食べてしまいました。

午後2時、パスに向けて出発です!

一時間ほど急な登りを登っていたら、夫が上で手を振っていました。もう着いたのか!ピンチョパスと同じく意外に簡単だった!と思っていたら、「あそこパスっぽいね」と。

あそこ…?

えっバカじゃないの?

でも確かにてっぺんに人が歩いてるのが見える…。

文句を言っててもオニオンバレーはこっちに来てくれないので、渋々登り始めます。

風も強く、横は切れ落ちていて普通に怖い。おまけに雪もある。

くそっアメリカではこれをハイキングと呼ぶのか…。何かに負けそうになりながらも必死で登ります。向こう側にはピーナッツバターが待っている!

下も上もあまり見ないように前だけ見て登っていると、次第に目線の先にてっぺんが見えてきました。

最後は深いトレースのついた雪渓を渡り、パスに到着!

感動よりも恐怖!これがハイキングなんですか…!

20分ほど休憩し、下山開始。下りもかなり急で、左足首に激痛が走ります。左足首を守るように降りていたら、右足首もぐにゃっとやる始末。

慎重に時間をかけてゆっくり降り、キラサージパスの分岐までやってきました。ところが近くに川が見当たらず、水を確保する必要があったので、さらに0.3マイル歩いてブルフロッグレイクトレイルの分岐まで行きました。

ブルフロッグレイクトレイルまでの下り途中、若いハイカー集団とすれ違いました。一人は日本語が話せる女の子で、「去年の夏に日本にインターンに行きました!」と快活に話していました。彼らはJMTではなく湖を巡るループというトレイルに挑戦しているそう。色んなトレイルがあって面白いなあ。

すでに何張かテントが張ってあり、一番人気のなさそうな川のすぐ側に設営。蚊がすごいけど、明日のことを考えたらどうだっていい。

「Are you Japanese?」

急に声をかけられたと思ったら、日本人男性でした。
JMTをノースバウンド(北向き)に歩いていて、今日で4日目とのこと。
VVRはどうだったとか、マンモスレイクはどうだったとか情報交換して別れました。

私たちはサウスバウンド(南向き)なので、標高をだんだんと上げていき高山病対策にもなっていると思いますが、ノースバウンドの人のスタート地点はマウント・ホイットニー。スタート地点が4000m越えです。タフなんだなあ、と思いました。また、南に行くほどパス越えがハードになってきたので、ノースバウンドの人は後半は楽だろうなあとも思いました。

とは言え、私たちの残りのパス越えはあと1つ。そのあとは最終ゴールのマウント・ホイットニー。

よくここまで頑張ったなあと感動。とりあえず、明日は久々に自分を甘やかしてあげたいと思います。

夕飯には「スリーシスターズシチュー」というフリーズドライ食を食べました。私の実家である雑貨屋のロゴにもなっている「スリーシスターズマウンテン」にちなんだ料理かと思いましたが、ネイティブ・アメリカンの伝統的な料理だそう。コーンや野菜、フルーツが入ったスープで栄養満点でした。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):19.1km


20日目(DAY134)

Bullfrog Lake Trail-Kearsarge Pass-Onion Valley Trailhead(6.3マイル/10km)

今日は待ちに待ったリサプライ日。嬉しすぎて全然眠れませんでした。朝6時過ぎにテントを出て、マッシュポテトを夫と仲良く半分こ。

出発準備もサクサク進み、8時には出発。

ブルフロッグレイクを通過します。カエルの鳴き声を聞き、そうか、ブルフロッグってウシガエルのことか…と納得。


小さいけれど美しい湖。

今日はオニオンバレーへ下るだけだ〜と思っていたら、なぜか登りが続く…。


警戒心ゼロの雷鳥の親子。

1時間ほど歩くと、恐怖のパスが立ちはだかりました。えっ今日パス越えあるの…?

予想外の展開にテンションが下がりましたが、これを越えなくては食糧にありつけない。もうこうなったら何だって登ってやる。
確かに「キラサージパストレイル」と、トレイル名の中にしっかりと「パス」の文字が入っているのに完全に見落としていました。昨日のうちにグレンパスを越えておいて本当に良かった…!
ただ、今日パスがあるということは、同じ道でここに戻って来るため明日もパスがあるということ。辛すぎる…。

貧血気味なのかエナジー不足なのか、少しフラフラでしたがゆっくりしっかり登ります。

小一時間ほどでキラサージパス(標高3,569m)到達。先にいたおじさんが写真を撮ってくれました。彼もリサプライのため、オニオンバレーへ下るとのこと。

ここから地獄の下りが始まります。急な斜面を下れば下るほど、明日ここをまた登ってパス越えするのか…と泣きたくなりました。
回避したいけど出来ない。明日のことは明日考えよう。


道路が見えた!

ちょうどお昼頃、オニオンバレートレイルヘッドの駐車場に到着。お迎えが3時だったか記憶があいまいだったので、調べようとするも圏外。さっき山の上の方では一瞬電波が入ったのに…!

しかたなく、荷物を夫に預けて空身で電波の入る場所まで登り返すことに。

途中すれ違ったカップルに、「何か落し物でもしたの?」と聞かれ、宿のシャトルが来るはずなんだけど電波が入らなくて調べられないから、電波のあるところまで戻るんだと言うと、「後からくる男性もシャトルに乗るって言ってたから聞いてみたら?」と。彼らにお礼を言って別れ、すぐ後から来た男性はパスで写真を撮ってくれたあのおじさんでした。

今日どこに泊まるの?と聞くと、私たちと同じモーテル!シャトルの時間が分からないことを伝えると、「3時ピックアップだよ、ヒッチハイクした方が早そうだな…」と言っていました。おじさんにお礼を言ってトレイルヘッドまで一緒に降りて、「また3時にね!」と別れました。

まだ2時間あまりあったので、水を確保すべく川へ。川でゆっくりしようと思ったものの日差しが半端じゃなく、水を汲んで日陰のある場所まで移動しました。

暇なので最後のフリーズドライを昼ごはんにして食べ、スマホのパズルゲームをして時間を潰しました。


夫はその間も釣り。

3時少し前、駐車場の一番目立つ所に移動すると、同じくマウントウィリアムソンモーテルに行くという人たちが5,6人集まっていました。
ノースバウンドで進んでいるというお母さんに、「ミューアパスの雪はどうだった?クランポンは必要?」と聞かれ、クランポンは必要ないけど、ミューアパスよりマザーパスに気をつけて!と助言しました。

シャトルの時刻を教えてくれたおじさんの姿は見えないままシャトルが到着。シャトルと言っても車内はお菓子の空箱など散らばっている汚い車でしたが、宿まで送ってくれるのは本当にありがたい…!

ノースバウンドでJMTに入っているドイツ人のソロハイカーと同じ車に乗り込み、彼は南のパスの状況を、私たちは北のパスの状況を提供し合いました。
遠くにインデペンデンスの町が見え、Googleマップで見ても小さいのは分かっていましたが、町の周りが限りなく砂漠!本当に何もありません。
町の北側はネイティブ・アメリカン居留地となっていることをドライバーのおじさんが教えてくれました。

モーテルに到着。チェックインをすると、真っ先にウェルカムドリンクを頂きました。夫はビール、私はアイスティー。

その後、すでに部屋に私が送ったリサプライバケツが置いてあること、部屋に置いてあるバスケットに洗濯物を入れてフロントに持って行くと、洗濯から乾燥まで1時間でやってくれること、洗濯中に着るものがなければ貸してくれること、明日朝食後にまたシャトルでトレイルヘッドまで送ってくれることを案内されました。ここは天国ですか…?

フロントにはリサプライバケツが山のように積んであり、中にはハイカーが寄付したフードや日用品、ガスなどが沢山入っていたので、洗濯物を出してからしばらく夫とバケツを漁り、ナッツとリッツ、多めに残っているガス缶などをありがたく頂きました。中には「五目ご飯」や「お赤飯」のフリーズドライなどもあり、日本人も沢山来ていることを知りました。

部屋はコテージで、キッチンなども付いています。1泊じゃもったいない…!

荷解きする前にとりあえずフリーフードから頂いたリッツを一気食いしました。量を気にせず食べられる幸せ…!
久々のシャワーはやはりなかなかシャンプーが泡立たず、5回目くらいでやっとスッキリしました。
30代に入ってから引っ込むことのなかったお腹周りがスッキリしていてちょっと嬉しくなりました。

宿のお母さんがとても気さくな方で、パンを買いたいんだけどお店はあるかと尋ねると、「道路の向こう側にシェブロン(ガソリンスタンド)があるわよ、夕ご飯はそこのサンドイッチもいいし、この通り沿いにおいしいタコトラックもあるわよ!」と教えてくれました。

とりあえずシェブロンに行き、念願のパンとピーナッツバター、大量に入ったm&m'sとポテチ、コーラを購入。
レジの男性はネイティブ・アメリカンで、どこから来たのか、と聞かれたので日本ですと返すと、
「私たちインディアンは日本人が大好きです。日本には本当に感謝しています。日本人はとてもよく働き、私たちに仕事もくれました。」と言われました。
私たちは何もしていないからお礼なんて言わなくていいよ、でもありがとう!と返し、何だか日本人でいることが誇らしい気持ちになりました。どこかの日本人の方、ありがとう!

帰り道、宿のお母さんおすすめのタコトラックに寄り、チキン・ビーフ・ポーク・チョリソーのタコスを計10個テイクアウト。

夕飯だけで全種類の肉を食すという偉業を達成しました。

VVRのハンバーガーの時と同様、食後に胃がもたれ吐き気がしていましたが、頑張って夜遅くまで起きて胃を休め、ポテチも食べることが出来ました。
私、恐ろしいほど貪欲になってる…。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):14.4km


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