スガ旅

夫婦で世界の大自然を歩いた旅の記録

サナブレスの道⑭

DAY38

Dornelas → Santiago de Compostela(29km)

朝6時半起床。今日サンティアゴに行く組はもう起きて準備していた。

朝ごはん代わりに持っていたお菓子と水で済ませて鎮痛剤を飲む。

7時半に出発。少しずつ空が明るくなり始めていた。ヘッドランプはいらない。

朝一で足が痛い。右の股関節まで痛くなってる。バルは次の村にあるだろうか。朝ごはんが食べたい。

しばらく歩いていると「巡礼者用休憩所」の看板があり、やった!と思う。が、建物の入り口まで行ってみると朝早すぎたのかまだ開いていなかった。

残念。仕方なく8km先の村までもくもくと歩く。
山道を登って行くと、ご褒美かのように、私を励ましてくれるかのように、雲海が現れた。

しばし立ち止まりながら写真を撮り、そこから急激な下り。路面が濡れていて滑って転びそうになり、慎重に下った。

次の村にバルがあると勝手に思っていたけど、到着するとバルはなし。トイレも行きたかったのに…。

村の中心部に行くと無人の自販機ショップがあり、パンも売られていた。パンを温めるオーブンまである。パンオショコラ(スペインではナポリターナと呼ぶ)を買い、温め、自販機のカフェコンレチェも買った。トイレに行きたいがとりあえず朝食だ。

ルイスが来たので「バルがないよ…」と呟くと、道と反対方向のホテルまで見に行ってくれた。「俺が見てくるから君はそこで待ってろ」と言ってくれる優しい軍曹。

結局ホテルも閉まっていて、さらに進むことに。
村は4-5kmおきにあるものの、バルがどこにもない。トイレの限界を迎え、最終日もか…と思いながら森の中で失礼した。

トイレを済ませると心配事はなくなり、また黙々と歩く。太郎は私より10kmほど早いペースだ。急がなくていいと言われたけど、私も早く到着したい。急いでも早くならない足を一生懸命動かす。膝から下はもうほぼ意思を持っておらず、膝から上を一生懸命に動かしてなんとか歩いている感覚だ。

出発してから20km、ようやくバルを発見した。外でバックパックを下ろしていると、中から「モモ〜モモ〜」と呼ぶ声が。中に入るとルイスだった。彼は今日ここに泊まると言ってくつろいでいた。同じテーブルに座り、今日まだ食べていなかったトスターダと、コーラを注文。スタンプも押してもらう。鎮痛剤も飲んだ。

ルイスとはここでお別れだ。私をいつも追い越して、一人でエモーショナルな気持ちで歩いていたのを毎度笑いで吹き飛ばしてくれたルイス。ルイスのジョークはいつもルイスの優しさだった。

もうきっと会えないと分かりながらも、ルイスにまた明日ね、と別れを告げ、出発。あと残り10kmだ。時間はかかっても歩ける。歩かないといけない。

10kmを切ってからは無心でひたすらに足を動かした。8km、7km、と目に見えてサンティアゴが近づいてきた。

残り4km、雨が降り始めた。カッパを着て雨の中歩き続ける。


大聖堂の尖塔が目に入り、サンティアゴの町に入ったことがわかる。残り2km、もうあと少しだ。

旧市街に入り、道に迷う。アプリで道を確認し、ルートに戻る。
そしてゴールのオブラドイロ広場に到着。

大聖堂の門に両手をつけ、終わった…とホッとした。振り向くと夫が後ろから迎えに来てくれて、心の底からホッとして涙が出た。終わった、終わった、長かった…。

気持ちが落ち着くと一気にお腹が空き、すぐに近くのレストランにご飯を食べに行った。メニューデルディアが16€、高くてもいい、食べよう!

プルポも肉もガリシアスープもムール貝も、二人でシェアして食べた。久々に日本語で会話しながら食事できるのも嬉しかった。


大好きなサンティアゴ名物のサンティアゴケーキ。

ホテルに行き、シャワーをゆっくり浴びた。そして雨が上がったのでまたオブラドイロ広場に向かった。

広場に着くと、夫と巡礼を共にしたポルトガルの道チームがいて、サンティアゴ到着を讃え合った。私は初めましてだったけど、太郎から話は聞いてるよ、君が奥さんだね!とみんなとてもフレンドリーだった。

ふと横を見ると、明日到着すると言っていたマティアスが今まさに到着。今日56km歩いてゴール。すごすぎる。そしてボブやイングリッド、ソフィアも合流してみんなで抱き合った。大切な仲間たち。

ボブがサンティアゴにモモという飲み屋があると言って、打ち上げはその店に行くことにした。

パブモモは中は若者がたくさんいて少し騒がしかったけど、お店の人に私の名前もモモなんだというとすごく喜んでくれてステッカーをくれた。
クレデンシャルにスタンプももらい、私の巡礼最後のスタンプがモモだったのでとても嬉しかった。お店の創業が私の生まれ年と同じで、1984と刻まれたモホンが店内にあった。こんなことってあるんだ。

どっと疲れが出て二人で先にホテルに戻り、まともなベッドでぐっすり熟睡した。

歩いた距離
37.8 km

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サナブレスの道⑬

DAY37

A Laxe → Dornelas(20.8km)

7時前に起床。顔を洗って廊下で足のストレッチ。
バルは8時にオープンするので、みんなそれに合わせて準備。


バルの開店を待つ巡礼者たち

バルは8時を少し過ぎてから開店し、女将さんは巡礼者のコーヒーとトスターダを次々に提供してくれた。「スタンプも忘れないでね!」「パンのおかわりいる人はいる?」と声をかけてくれる素敵なバル。

今日は20km、できればもう少し進みたい。
今日泊まるアルベルゲがこの旅最後のアルベルゲだ。ちょっと寂しくなる。

まずは10km、この旅を思い返しながら歩いた。足の痛みは消えず、本当に小さな歩幅でゆっくり歩いた。

太陽が似合う暖かいアンダルシアから始まり、雨と泥と牛に悩まされたエクストレマドゥーラ、雪が降ったカスティーヤイレオン、そして足の痛みと共に歩いた最後のガリシア。4ステージに分けるとしても、どれも簡単ではなかった。

最初はあんなに遥か彼方だったサンティアゴがもう目の前だ。巡礼者の数も急に増えてきた。セビージャからスタートした他の巡礼者も続々とゴールしている。当たり前だけど、前回とは全く違う旅になった。何というか、前よりも一層、全てのことに体当たりした感覚だ。強くなった。

「モモ」の中で、繰り返し使われるセリフがあって、それがとても印象的だった。

「明日になれば分かるさ」

今回の旅では、長い距離と悪天候、洪水に悩まされ、今日自分がどこまで行けるのか、その道が明日通れるのか、何も予想できなかった。
足を痛めてからはより一層、明日歩けるのかも何もわからなかった。
でも、誰にも予想できない未来に不安を抱いても仕方がなく、その時になればわかる。
待つことが苦手になってしまった現代人の私は、この旅で「モモ」の世界を通して、その時になればわかること、待つことを思い出した。

10km歩いてバルに入り、カフェコンレチェとクロワッサンを頼む。
スタンプももらってトイレも借りた。

そこからさらに5km歩き、薬局で鎮痛剤を買った。薬局のお兄さんに、ふいに「日本人ですか?」と日本語で話しかけられ、驚いた。日本に住んでいたことがあるらしく、日本語で接客してくれた。こんなことスペインで初めてだ。嬉しかった。
「かかとが痛くて…」と言うと、「典型的ですね」と言われた。典型的なんですね…。

バルに入るとイングリッドとソフィアが出るところだった。抱き合って「サンティアゴで会おう!」と約束し、別れる。
ハンバーガーを注文してコーラを2本飲んだ。

そこからもうひと踏ん張り。5km歩いて次の村へ。今はそこが限界かな。

アルベルゲは外観は古いけど中は美しく、オスピタレロのセンスが光っていた。夕食もお願いした。


シードルを作る絞り機らしい。

ルイスが一番乗りで到着していて、私が着いた時にはもうシャワーも済ませて洗濯物を干していた。

宿泊者はドイツ人4人、スイス人、オランダ人で私以外全員ドイツ語話者。一人になりたいと願ったから神様が仕向けたのだろうかというくらいドイツ語会話に入れなかった。
ルイスの軍人時代のアフガニスタンでの経験談を聞いたり、他の会話の内容はほぼわからなかったけど、ドイツ人の男性が気を遣ってたまに英語で通訳してくれた。

夕食はもう何というか、素晴らしかった。オスピタレロのセンスが良すぎる。本当に美味しかった。

食後、オスピタレロの旦那さんに話があると言われ、人を探して欲しいと頼まれた。
日本人巡礼者で、80代の男性。その人が描いた水彩画とカレンダーをプレゼントされたそうで、どうしてもその人にお礼が言いたいが、連絡先がわからないという。

日本に帰ったら調べてみるねと約束した。

ルイス(元軍人のおじちゃん)とはベッドは端と端で離れていたのに、横になってしばらくして「モモ〜、モモ〜」と呼ばれる。起き上がり、「何?」と聞くと、「いびきかくなよ!」と言われ、「あんたもね!」と返す。そしてお互いGood night と言って布団に入った。

明日は約30km。そんなに歩けるのか不安だけど、明日になればわかるさ。太郎が待ってる!

歩いた距離
25.8km
使ったお金
バル4€
バル2.5€
バル5€
アルベルゲ17€
夕食13€
合計41.5€(≒6,600円)

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サナブレスの道⑫

DAY36

O Castro → A Laxe(18.5km)

寝ている時も足が痛み、何度か目が覚めた。
朝7時に起床。イングリッドは先に起きていた。
ピーターも起きてきて、パンをカット。イングリッドはコーヒーを入れて卵を焼いてくれた。
みんな揃って朝食をとって、イングリッドは嬉しそうだった。

後片付けをして、8時半に出発。鎮痛剤は飲んだがなんだか右足も調子が悪い。

今日は20kmほどの行程で、足が大丈夫そうならもう少し進もうと思っていた。出だしからかなりゆっくり歩いて、3km先の村で早速バルに入った。サンティアゴで巡礼証明書をもらうには、サンティアゴから100kmの場所から1日に2個以上スタンプをもらわなければならない。アルベルゲで1個はもらえるが、他はバルに立ち寄った時にもらうのを忘れないようにしないといけない。

のんびり歩いていると、後ろからルイスがやってきた。私がスマホアプリでルート確認していると、矢印を信じろ、スマホなんか見なくて大丈夫だ!と言って颯爽と抜かしていった。そうだよな、いつからこんなにスマホを見るようになったんだろう。

サラマンカ以降、人と一緒にいることが多くなって少し疲れていた。歩き始める前は「孤独に耐えられるだろうか」と心配していたのに、終盤になって「一人になりたい」と願っている自分に笑えた。

自分のペースを崩さない強い意志が必要だ。人のペースに引っ張られては、自分の旅でなくなってしまう。

たくさんの人に抜かされたけど、今日のアルベルゲはベッドがたくさんあるから大丈夫。ゆっくり行こう。残り少ないカミーノを楽しもう。そんな気持ちでまたバルを見つけて立ち寄った。

好きな時に歩いて好きな時に休む。全て自分の好きにしていい。誰かに合わせる必要なんてない。

2回目のバル休憩の後は5kmで目的地に到着した。アルベルゲは人口50人の村にあるとは思えないほど近代的なデザインだった。中に入るとちょうどルイスとイングリッドが受付しているところだった。

受付を済ませ、コーヒーを入れてチョコレートを食べた。太郎に電話もかけた。

シャワーから出ると、数日前に会ったソフィアが到着していて再会を喜んでいたら、受付の方から懐かしい声が聞こえてきた。ボブだ。めちゃくちゃ嬉しい!久々の再会だった。

その後も次々に巡礼者が到着し、夕ご飯は大人数でバルに行った。

ボブに、「次はどのカミーノを歩くんだい?」と聞かれ、「北の道に行ってみたいけど、今回歩けなかったセクションもまた歩きに来たいな」と答えた。
ボブは、「歩く必要はないよ、君がその足で毎日歩いた20kmは、普通に歩ける人の40kmよりはるかに重いんだ。歩けなかったパートのことなんて考えなくていい」と言われ、急に涙が溢れてきた。同じ道を同じ条件で歩いた人に言われたからなおさらだ。ボブは私の1日後にセビージャを出発していて、全部わかっている。「ありがとう、ありがとう」ボブの手を握ってそう言った。

歩いた距離
21.2km

使ったお金
バル1.5€
バル2€
バル9€
アルベルゲ10€
合計22.5€(≒3,600円)

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