スガ旅

35歳を迎え、夫婦で仕事を辞めました。

SUGATABI.

スガ家の旅の記録

ユーコン川下り【前編】

いよいよ夫と二人で9日間のユーコン川下りが始まります。

私たちのルートはテスリン川のジョンソンズ・クロッシングから始まり、途中フータリンクアでユーコン川に入り、カーマックスという町までのトータル370kmのコースです。
全てユーコン川でホワイトホース出発となると、「ラバージ湖」という海のように馬鹿でかい湖を通過しなくてはならず、初心者の私たちにはちょっと危険、ということだったので、ラバージ湖を避けるこのルートに決めました。
また、8月中旬からはオーロラが見られる可能性があるらしいのですが、櫛田さんは白夜で日が長い6月もおすすめ、と仰っていたので、6月末に決行しました。結果的に、明るい中で眠ることで野生動物への恐怖が多少薄れたので、この時期にして良かったです。実質8日間で下りましたが、前編と後編に分けて記録しておきます。

1日目(DAY73)

出発当日の朝、櫛田さんに迎えに来ていただき、たくさんの荷物を事務所に運びます。

この日、私たちの他に、同じくジョンソンズ・クロッシングからスタートする他のお客さんがいるとのことで、事務所で顔合わせとなりました。

さらに、櫛田さんは他のお客さんのお迎えのため、タニカドさんという方にスタート地点まで送って頂きました。写真家のタニカドさん、車中で色々なお話をしてくれたのですが、聞けば聞くほどすごい人生を送っていて、「やるかやらないか、それだけだから」という名言をいただきました。すでに電波が入らなかったためタニカドさんが何者なのか分からずにいましたが、とにかく挑戦しようとする人の背中を押してくれる人で、私たちのような初心者にもとても優しく、人生の教訓をたくさん教わりました。

途中、熊を発見するや否や、「熊だ!戻りますね〜」と言ってUターンし、撮影させてくれる神対応。野生動物を撮影するコツなども教えてくれました。
北海道のクマ牧場以外で熊を見たことがなかった私には刺激が強すぎて、「今日から熊のテリトリーで生活するんだ…」と考えると、背筋がゾクっとしました。

出発地点に到着し、バランス良く荷物を積み込みます。
タニカドさんからも色々とアドバイスを頂き、釣れるポイントやおすすめのキャンプ地なども教えていただきました。

一緒にスタートするユウスケくん。アラスカから自転車で南下しており、ゴールはアルゼンチンだそうです。やたらとイケメンですが中身もかなりの好青年で、私と夫はすぐに彼のことが好きになりました。彼が借りた船はカヤックですが、彼も初心者とのことでタニカドさんが色々とアドバイスをしていました。
初日のキャンプ地だけ決めて、お昼過ぎにスタートしました。

テスリン川は流れが緩やかなので漕がないとあまり進まないのですが、この日の天気は最高。ゆっくりゆっくり漕ぎ進めて、この日はスタートから20km地点をキャンプ地としました。

初日は川地図に「good camp」と記載された場所へ。キャンプ地には基本的にファイヤーピットがあったり、いい所だとこんな棚が作られたりしています。人の形跡があるので蚊も割と少なく、薮の中よりは安心。

青い方が私たちのベアバレル、黒いのがユウスケくんのベアバッグ。寝るときはテントからなるべく離した場所に置きます。

この日の晩ごはんは手羽先とトマト。ユウスケくんのビーフシチューが美味しそうでした。

白夜なので、夜中の1時頃に薄暗くなります。トイレは森の中に入って穴を掘ってしますが、熊が来ないよう、手を叩きながら森に入ります。

寝るときはベアスプレーを持ってテントに入り、武器としてパドルをテントの外に置きました。
「熊よ、どうか来ないでおくれ…」と祈りながらも周りの音にいちいち反応し、なかなか寝つけませんでした。

2日目(DAY74)

熊に襲われることも、食料を奪われることもなく、無事に朝を迎えました。

朝からインスタントラーメンを食べて身体を温め、ユウスケくんとキャンプ地を決めてから出発。

この日から漁券が有効だったので、夫は私が漕いでいる間釣りを楽しんでいました。

あまりにも心地よい陽気だったので、夫と交代で昼寝もしました。顔が日に焼ける事などどうでもよくなるくらい、人生で一番気持ちの良い昼寝でした。

誰もいない川の上で、聞こえるのは鳥のさえずりとカヌーの下から聞こえるシュワシュワ〜という音のみ。絵のような景色を独り占め。何て贅沢なんだろうか。

白頭鷲が堂々と佇んでいました。飛ぶ姿も実に優雅です。

キャンプ地に着くとすぐに雨が降ってきました。この日のキャンプ地はスタート地点から約40km地点。


協力しあって木を切る二人。友情が芽生え始めたのでしょうか。


「そんな小さいの逆によく釣れましたね」と言われる夫。

この日の晩ごはんは豚肉を焼いてサルサソースをかけたもの。
そして第一の失敗。石油を含んだ着火剤は臭いが強いので、昨晩ベアバレルに入れたところ、ベアバレル内が石油の臭いになってしまいました。小分けでジップロックに入れていたトルティーヤチップスにも臭いが移ってしまい、後味が石油味になってしまい、捨てようとすると、
「食べないんすか?自分食べます」と野生の男ユウスケくんが言うので、身体壊すかもよ、と言いましたが、「食べ物に変わりないんで!」と食べてくれました。ますます好感度アップです。

3日目(DAY75)

雲行きが怪しい中、キャンプ地を決めて出発。この日目指すのは、櫛田さんもタニカドさんも激推ししていた爆釣ポイント。そこで大量に釣って今日の夕飯にする予定です。スタート地点から100km地点です。

私の足元には雨に備えて常にレインカバーをつけたバックパックを置いて、その上にジップロックに入れた川地図をいつでも見られるようにしてあります。

川地図に細かく描かれた地形やメモと照らし合わせながら、現在地を把握します。夫は後ろで舵を取り、私は前でナビをします。私は舵取りがかなり下手で、とにかく全力で前進することと全力で方向転換することしか出来ません。どれほど夫をイライラさせたことでしょう…

たまにトイレ休憩とランチ休憩を取るため、ちょうど良い島に上陸したりします。

目的地に着いて即、釣りを始める男たち。雨が降りそうだったので、色々と準備をして戻ると、すでに3匹釣り上げていました。

私も夫も魚を捌けないのですが、なんと野生の男ユウスケくんが捌けると言い出しました。

何なんだ…彼は何者なんだ…。私と夫だけだったら釣るだけ釣って食べられないところでした。


雨が降ってもどんどん釣ってくる夫。この後近くに雷が落ちて全員やめました。

この日の釣果はグレイリングが8匹。塩焼きとフライ、バター醤油炒め。どれも絶品でした…!

焚き火をしながらユウスケくんのアラスカでの冒険談を聞き、これまでの様子からしてサバイバル生活得意なんだろうなあと思っていたら、アラスカに来て初めてキャンプを経験したというので大変驚きました。
私たちよりも遥かに野生的な彼は、1か月のアラスカでの野外生活で急速に経験を積んだようで、どこに放たれても自力で生きてゆけるたくましさを備えていました。
そんな彼のブログはこちらからどうぞ。

この日、キャンプ地に熊の足跡を見つけてしまいました。テントを張った後だったし夜も更けていたので移動はしませんでしたが、動揺してしまいしばらく寝つけませんでした。

4日目(DAY76)

結局何も出てくることなく朝を迎えました。
櫛田さんから出発前に、「寝るときはテントにナイフを持って行った方がいいよ。テントごと襲われたらどうにも出来ないから、ナイフを使って外に出て」と言われていました。また、食べ物を襲われたら奪い返さないといけないとも言われていたので、かなり緊張していたのか、テントから出るとき足をつりました。

この日までの行程がだいぶゆっくりだったので、今日は頑張る日と決めて80km進むことにしました。
それでも濡れたものを乾かすためにゆっくりする私たち。

ユウスケくんを見送りながら釣りをする夫。

出発してしばらくすると、遠くに雨雲が見えました。こちらを通りませんように…と願いながら漕ぎ続けます。

ランチ休憩でも釣竿を振り回す夫。

私ものんびりと休憩してしまいました。この後恐怖体験をするとは夢にも思わず…。

休憩を終えて出発すると、あっと言う間に雨雲に囲まれてしまいました。雨の降り始めにレインウェアの上は着たけれど、パンツは履く暇がありませんでした。

大雨の中必死に漕ぎ進めるも危険と判断し、近くの陸地にカヌーを止め、細い木の下で二人で雨を凌ぎました。
その間も私は深刻な顔をしていたのですが、夫が急に笑い出し、「こんな所で大雨の中必死にカヌー漕いで、本当よくやってるよ」と言いました。
褒められたせいか私の気分も明るくなり、雨も弱くなり、こんなことどうってことない、と思えました。

10分程度で雨雲は過ぎ去り、急いでキャンプ地に向かいました。
ユウスケくんのカヤックが止まっていたので上陸すると、他にベルギー人のパーティーがテントを張っていました。暗黙のルールとして、「他の人が先にテントを張っていた場合は違うキャンプ地にする」と教わっていましたが、雨で濡れて冷え切っていた私は身体が震え始めていたので、テントを張っても良いか聞いて、一緒にテントを張らせていただきました。嫌だとしても言えないですよね、本当に申し訳ない…。

すぐに濡れた服を全部着替えて、温かい飲み物と焚き火で身体を温め、ようやく通常に戻りました。

優しい彼らは濡れたものを乾かす場所も提供してくれて、有り難かった反面、自分の判断の遅さを反省した1日となりました。

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