スガ旅

夫婦で世界の大自然を歩いた旅の記録

私たちのJMT(ジョンミューアトレイル)⑥

11日目(DAY125)

Upper Vermillion-VVR-Mono Creek(1.1マイル/1.7km)

朝9時45分発のフェリーでバーミリオンバレーリゾート(VVR)に行くので、7時過ぎに起床。
標高が1,000m近く下がったせいか、凍えずに朝までぐっすり眠れました。

朝ごはんのオートミールを食べていると、続々とハイカーたちがやって来ました。みんなVVRに行くハイカーたちです。

キャンプしていた場所から150mほど行った所にフェリー乗り場があるので、9時にはみんなそちらに移動(早い…!)。

30分ほどぼーっとして待っていると、フェリーがやって来ました。生き返ったようにキラキラした表情のハイカーたちが続々と船から降りてきて、飢えた獣のような私たちを見て「Enjoy!!」とさわやかに去って行きました。

12人で船に乗り、9時45分きっかりにいざ出港!昨日声をかけてくれたご夫婦が船長に、「この子たち、昨日あと2分早ければってところで船に乗り遅れたのよ!」と紹介してくれ、みんなから「Oh...それは残念だったね…」と慰められました。

20分程でVVRに到着。到着後、ウェンディというハイカーヘルパーが施設の説明をしてくれました。
ウェンディは軍隊上がりみたいなリーダーっぷりで、これからまさにブートキャンプが始まりそうな勢いでした。

「PCTハイカー・JMTハイカーは1泊目のキャンプは無料。水は濾過しなくても飲める綺麗な水よ!
ランドリーとシャワーはそれぞれ7ドルずつ。受付でトレイルネームかリアルネームを登録して、スルーハイカーは1本無料のビールかジュースをゲットして!バッテリーやケータイの充電はそこの電源を使って!」


"Next beer 163.4mi."の案内が。

何てハイカーフレンドリーな施設!
早速夫と飲み物を選び、私はポテチとコーラ、夫はビールを手に受付をしました。今日中にトレイルに戻らなくてはならないけど、シャワーとランドリーを使いたいと言うと、洗濯洗剤とバスタオル、シャワー用のトークンをくれました。お会計は基本的にチェックアウト時に一括なので、フェリー代やショップでの買い物、カフェでの食事も後でまとめて一括払いです。

夫が、「今日、ゼロデイ(歩かない日)にしてもいいかもな〜」とぽつりと言ったので、私もその気に。キャンプ場も無料だし泊まって行きたい!


シャワー用のトークンと洗剤。シャワーは8分。

そこに同じくJMTハイカーのスコットが話しかけてきました。スコットは昨日、私たちがフェリー乗り場に向かって走っているのを目撃して、「急げ!」と声をかけてくれた人。彼は昨日早々にフェリーを諦め、今朝一緒の便でここに来ました。

去年もここに宿泊したらしく、本当に素晴らしかったからまた来たんだ、と言っていました。夜はハイカーは無料のBBQもあるとか。
ベアクリークトレイルという別のルートがとてもいいので、そちらを通ってJMTに戻るよ、と言っていました。私たちがフィッシュクリークトレイルでプチ遭難した事を話すと、絶対に行かない!と言っていました。
「JMTに来たきっかけは?」と聞かれ、映画「Wild(原題)」(邦題「わたしに会うまでの1600キロ」)を観たんだ、と話すと、「じゃあ君もお母さんを亡くしてドラッグ漬けだったんだね」とジョークを飛ばされました。いやいや、私の人生は至ってノーマルだけど、この映画のおかげでアメリカにロングトレイルがあることを知ったんだ!と伝えました。

スコットはショーンコネリー似の素敵なおじさまで、映画に出てますよね?と言ったら笑っていました。

いい出会いもありますます泊まりたくなってきたけれど、今後の行程も不安。夫と相談し、昨日の下山くらいのスピードが出せるなら泊まってもいいよ、と言われ、諦めることに。絶対にもう走れない…。

という訳で、せめて歩いてJMTに戻ることはなしにして、午後のフェリーでトレイルに戻ることにしました。

帰りのフェリーの時刻までに全ての準備を完了すべく、シャワーを浴びて洗濯を回している間にランチを食べ、乾燥機を回します。

ランチに食べたハンバーガーがものすごいボリュームで、1/4だけ残してしまいました…。残した分をベアキャニスターにどうにか入れられないか考えましたが、諦めました。

食糧のチェック中、ストアの前にハイカーボックスを発見。ハイカーボックスとは、食糧や日用品をリサプライしたけれど、ベアキャニスターに入りきらなかったり持ちきれなかった場合にこの中に入れ、他のハイカーに譲りますというありがたいボックス。中を見てみると新品のフリーズドライフードが3袋も!
味にはずれなしのマウンテンハウスのフリーズドライは一袋10ドル〜15ドルほどするので、40ドルほど節約出来ました。

他にもハイカーのみなさんが自作したであろう食べ物がジップロックに入った状態でたくさん入っていましたが、何なのかわからなかったため市販の袋に入っているものだけ頂戴しました。

ここから10日間は無補給になるので、ショップでガスを1缶とフリーズドライ食をもう3食、あと目に入ったミニドーナツと一回分のココアを一袋買いました。

今朝一緒のフェリーに乗ったみんなはここにステイするらしく、ここを行程に組み込まなかった自分を激しく責めました…。あと1日余分に行程を組んでたら本当に泊まりたかった。素晴らしい施設。

後ろ髪を引かれながら、VVRを後にします。さようなら、VVR。私に元気をくれてありがとう、VVR。

昼に食べたハンバーガーがもたれて、軽く吐きそうになりながら乗船。太田胃散を飲んだけど一向に効かず…。

元のフェリー乗り場に近づくと、これからVVRに向かうハイカーたちがたくさん待っていました。みんな今日泊まれるんだね、最高だね、羨ましい。

フェリーを降りると、待っていたハイカーたちが皆「Happy trails!!」と声をかけてくれました。
私も今朝乗船する時に言われたように「Enjoy!」と返します。

さあ、気持ちを切り替えていかないと。ここから元のトレイルに戻ります。が、ザックが重いのと吐きそうなので全然力が出ない。力を出すためにでっかいハンバーガーを食べたのに、今にも吐きそう。

夫が呆れ顔でこちらを見ていて、本当に申し訳なく情けない、けど本当に吐きそう。

本当はJMTの行程を少しでも進める予定だったけれど、冷や汗が止まらず胃液が出続けている私を見かねて、JMTとの合流ポイントでキャンプすることに。

合流ポイントから橋を渡ったところにとても感じの良いキャンプ地があり、そこにテントを張りました。

夕飯はいらないくらいお腹がいっぱいだったので、夫常備のカモミールティーを飲んでお腹を休ませました。
元気な夫はその間釣りに出かけていました。

明日からは10日後のオニオンバレーまで完全にリサプライ無しなので、気を引き締めていかないと!
10日後のシャワーがすでに楽しみで、私は文明の中でないと生きられないな、と再確認しました。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):5.2km


12日目(DAY126)

Mono Creek-Bear Creek(8.9マイル/14.3km)

朝6時過ぎに起床。今日から10日かけて、少しずつ行程を取り戻さなくては…。

朝ごはんのオートミールを食べて、8時にキャンプサイトを出発。

本来ならばセルデンパスを越えた先のミューアトレイルランチまでの予定ですが、今日は初っ端から登りがきついため、セルデンパス手前のベアクリークで1泊する予定。

出発してすぐに、きついスイッチバックが始まります。まだ気温も低いため、暑さはマシ。
午前10時、まだ同じようなスイッチバックを登っています。永遠に続くんじゃないかと思うようなダラダラした登りで、頭がおかしくなりそうになりました。

日本での登山ならば縦走と言っても2泊3日くらいしかしたことがなく、二つの山を登って降りて温泉に入って美味しいご飯を食べて…ですが、今この山を越えてもさらに高い峠を越えるためにまた下って…の繰り返し。風呂にも入れずご飯も食事というよりはカロリー摂取と言った方がいいようなもの。
毎日蚊とハエと戦って、身体中刺されてかゆいし、重いザックで肩や背中はアザだらけ。
トイレのためにスコップで穴を掘っているだけで蚊に刺されまくるし、食事も排泄もゆっくりなんてできない。
何で私、スルーハイクしようって言ったのかな…。

2015年、仕事帰りに日比谷シャンテで見た映画でPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)を知り、アメリカにはこんなに長いトレイルがあるのか…!とものすごく興奮して色々と調べたところ、PCTの他に東海岸にあるアパラチアン・トレイル、そしてPCTの一部となる西海岸のJMTがある事を知りました。

youtu.be


世界旅行に出かけるならば、ぜひ歩いてみたいと思い夫に相談。夫は、セクションハイクでいいんじゃないの?と言っていましたが、何度も来れる場所じゃないし、セクションハイクは休みが取れなくてスルーハイクを渋々諦めてするものだと思っていたので、絶対にスルーハイクと決め込んでいました。

これが1週間とかだったら、こんなに苦労することなかったんじゃないか、とネガティブな気持ちが溢れ出てきました。

そんな私とは裏腹に、すれ違うハイカーはみんな生き生きとした表情で「今日も素晴らしい日だね!Happy trails!」と明るく声をかけてきます。みんな辛くないのかな…

言い出しっぺの私よりもむしろ夫の方が覚悟が決まっていて、「3週間風呂に入れない覚悟で来てるから、臭さとか不快感とかどうでもいい」と、めちゃくちゃ男気溢れています。

今日で12日目。トータル24日間の予定だから、ちょうど半分。嬉しかったり悲しかったり、怖かったり辛かったり、毎日歩いてご飯食べて寝ているだけなのに、気持ちのアップダウンも激しい。

正午過ぎ、やっと登り終えたのか、フラットな道に入りました。昨日夫が少し話したというサンフランシスコからのカップルと再会し、全く同じ行程で進んでいることを知りました。

ヨシュアとクリスティーナ。とてもいい人たちで、「毎日台湾のティーセレモニーをしてるから、今度一緒にしようね」と言われました。
それ以来、私たちの食後のお茶の時間もティーセレモニーと言うようになりました。

この後の休憩中に、私のザックにかけてあったフリースが消えていることに気がつきました。いつもよりラフにくくりつけていたせいか、途中の木の枝か藪かにひっかけて来たのでしょうか…。
夫がすぐに探しに行ってくれましたが(優しい)、しばらく戻ってみたけど無かったとのこと。だいぶ手前で落としたみたい。長年連れ添ったマウンテンハードウェアのセール品のフリースとここで別れることになるとは…。それよりも、"Leave No Trace(痕跡を残さない)"の精神を大事にしているトレイル上に物を落としてしまったことが一番申し訳ない。ごめんなさい…!

今日のキャンプ地の手前にベアクリークの渡渉ポイントがあり、流れも激しいし一人で渡るのは危険と聞いていましたが、私たちが通るときには水かさは膝上くらい、流れはたしかに強いけれど、危険はありませんでした。

無事に渡渉を終え、ファイヤーサークルのあるキャンプ地を見つけて設営。

まだ4時前だったので、川で汲んだ水で手ぬぐいを濡らし、身体を拭き、汗を吸った服もゆすいで干しました。少しはさっぱりしました。夫は今日も釣りを楽しんでいました。

5時頃に米を炊いてフリーズドライのビーフシチューと一緒に食べました。

常にお腹が空いている私を心配してか、夫が「もっとご飯食べる?スープもいる?」と自分の分を分けてくれたのが本当に嬉しかった。夫よりたくさん食べるのにすぐにバテて申し訳ない。

今日はいつも以上に蚊が多く、早々にテントに入りました。明日はセルデンパス越え。JMTのハーフポイントまで行けるといいな。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):16.2km


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