スガ旅

夫婦で世界の大自然を歩いた旅の記録

JMTを終えて

JMTが終わり、ロサンゼルスからフランスのパリに移動。その後バスク地方のバイヨンヌという小さな町に来て、身体を休めています。

もう1週間も経つというのに、私の心はシエラネバダに置き去りのまま。それほど私の人生の中で強烈な1ヶ月でした。

新しく出来た「家族」とありがとうの気持ち

ケイティがよく、「トラミリー(tramily=trail family)」と口にしていましたが、トレイルで出会い、同じ困難を乗り越えてきた同志たちとは今でも家族のように頻繁に連絡を取り合い、またどこかで山に登りたいね、とか、シエラが恋しいね、とか話しています。
不思議な縁で同じ期間をあの山奥で過ごした世界中のトラミリー。JMTが終わり次第彼らは元の生活に戻り仕事に復帰するわけですが、皆やはり気持ちが追いつかない様子。
衣食住を背負い、あれだけの大自然にどっぷり浸かっていたのに、何不自由ない都会の生活に戻って戸惑いを感じるのでしょう。1人は昨日、レンジャーのポストが空いていないか問い合わせをかけたそう。みんな揃ってJMTロスです。

「美しい自然の中で毎日キャンプできる!」
「登山じゃないから頂上まで行かずに縦走できる!」
と、メリットしか頭に入れずに挑戦したJMT。

昼は灼熱の太陽に照らされながら汗だくで歩き、夜は凍えるほど寒い中防寒着を来て眠り、毎日山を登っては下り、熊に怯え、蚊と戦い、少ない食料で過ごした24日間。

その反面、私たちを暖めてくれる朝日に毎朝感謝し、川で身体を清められることに感謝し、山を越える度に目の前に広がる光景に感動し、少ない食料を夫と大切にわかちあった24日間でもありました。

「ありがたいね」

トレイル上で夫と何度も口にした言葉。
都会で日常生活を送っていたら当たり前過ぎて感じることのできなかった気持ちでした。

歩いた距離は434km

ジョンミューアトレイルは、かの有名なヨセミテ国立公園のハッピーアイルからアメリカ本土最高峰のマウント・ホイットニー頂上までの340kmですが、私たちはハッピーアイルの許可証が取得出来なかったため、手前のグレイシャーポイントから歩いたことと、リサプライのためにトレイルと町を何度か往復したこと、道に迷ったこと、ゴール地点からトレイルヘッドまでの下山も合わせて、実際に歩いた総距離は434km。計算してみて驚きました。

ヨセミテ国立公園から入り、キングスキャニオン国立公園、セコイア国立公園、そしてインヨー国有林を通過しました。

南下するにつれ景色がどんどん変化し、とくに後半、絵の具をこぼしたような青空の下に白く険しい岩山が広がっている風景が、今でも脳裏に焼き付いています。

自分が蟻のように小さく感じるくらいの大自然の中を毎日歩き、考えていたことと言えば今日は何を食べようかとか、今日のキャンプ地に蚊はいるかなとか、あそこトイレにちょうど良さそうだなとか、頭めっちゃ臭いなとか、そんな程度です。ひもじくなってからは馬の糞がお饅頭に見えるようになってきたりもしました。

ただ歩くだけの1ヶ月。電波も入らず外からの情報はなく、トレイルの状況はすれ違うハイカー同士が口頭で伝え合う。アナログでシンプルで、不便ゆえに頭を使い、絶望したかと思えばちょっとしたことに幸せを感じ、私の場合、穏やかというよりは泣いたり笑ったり忙しい日々を過ごしました。

この美しくもハードなトレイルを歩ききることが出来たのは、公園を管理し、常にトレイルの整備を行ってくれているレンジャーの皆さん、また、各リサプライポイントで私たちハイカーを笑顔で温かく迎えてくれたスタッフの皆さんのおかげです。

また、JMTを歩いたおかげで、自然保護と観光の両立や、それに伴う経済効果なども知ることができました。私の故郷も国立公園内にあるため、帰国したら今一度日本の国立公園に注目してみたいと思いました。

映画のことば

私がJMTに興味を持つきっかけとなった映画の中で、印象的な言葉がいくつかあります。

『わたしに会うまでの1600キロ』(原題『wild』)

youtu.be

PCTを歩いた女性のエッセイが映画化となった作品で、主人公シェリルのお母さんのこんなセリフがあります。

“There is a sunrise and a sunset every day and you can choose to be there for it. You can put yourself in the way of beauty.”

「朝日と夕日は、見ようと思えば毎日見られる。美しさの中に身をおきなさい。」


週末はたまに山に行っていましたが、買い物好きでもグルメなわけでもない私は会社と家の往復のみ。行き帰りの満員電車に揺られながら、窓に映る疲れ果てた自分の顔を見る毎日。朝日と夕日をゆっくり眺めるということは、つまりは心の余裕です。都会で忙しく働き、そんな余裕がなかった私の心にこの言葉はかなり突き刺さりました。



『MILE... MILE & A HALF』

youtu.be

また、JMTを舞台としたこの作品のオープニングは、ジョンミューアのこんな言葉で始まります。

“Wander a whole summer if you can…time will not be taken from the sum of your life. Instead of shortening, it will definitely lengthen it and make you truly immortal. ”   —JOHN MUIR


「ひと夏の間 散歩しても寿命は縮まない
むしろ真の意味で不死身の人間になれるのだ」
             ジョン・ミューア


世界旅行を決め、仕事も生活も全て手放すことに罪悪感を抱いていましたが、この言葉に救われました。私たちの場合「1年の散歩」になりますが…。
人生100年時代に向かう今、1年くらい日本社会から離れることが悪とは思わなくなりました。そしてJMTを終えた今、あの時決断して本当に良かったと心から思います。


『ロング・トレイル!』(原題『A Walk in the Woods』)

youtu.be


アパラチアントレイルを舞台にしたこちらの作品にも、ジョンミューアの言葉としてロバート・レッドフォードのセリフにこんな言葉が出てきます。

“Grab a loaf of bread, throw it in a sack, and jump over the back fence.”

「パンを手に取りザックに詰めて、垣根をとび越えろ」


こんな衝動に駆られることはしばしば、でもなかなか出来ないのが現実です。
この映画を観て、何歳になろうがこの気持ちは変わらず、そして何歳であろうと実行できるんだと勇気付けられました。

次の目的地

私には到底無理だろうな、と思っていたJMTスルーハイク。下調べや準備は大変でしたが、勇気を出して踏み出せば、想像を絶する感動が待っていました。
そして、そんなことがこの世界にはいっぱいあるんだろうな、とまた夢が広がりました。

明日はサン=ジャン=ピエ=ド=ポーという町に移動し、明後日から800kmという長さの巡礼路を歩きます。
とてつもない長さですが、果たして歩ききれるのでしょうか。

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私たちのJMT(ジョンミューアトレイル)⑫

23日目(DAY137)

Bighorn Plateau-Guitar Lake上(9.8マイル/15.8km)

朝6時に起床。テントを開けるともう空は明るくなり始めていました。オマールも外に出て日の出を待っている様子。

目の前の池は鏡のように静かで、山々を美しく写し出していました。

夫が起きてすぐに水を汲んでくれたので、浄水して朝ごはんの準備です。
朝ご飯を食べていると、どこからともなく三脚を持ったおじさんが現れ、急に撮影を開始し出しました。

オマールが池の水を汲もうとすると、カメラマンがストップをかけました。今ベストコンディションだから後にしてくれと。

こちらからすれば水を汲まなくては朝ごはんも食べられないし、何だか勝手な人だな、と思いました。

いつも穏やかで優しいオマールが憤慨しており、おじさんが立ち去った後に、「美しい朝なのにさっきは嫌な場面を見せてしまってごめんね」と謝りに来ました。いやいやいや!オマールは何も悪くないよ!と言ってオマールを元気づけました。

今日はギターレイクの少し上、トレイルクレスト手前で仮眠をし、夜中にマウントホイットニーにアタックする予定です。10マイルほどの行程ですが、のんびり行く事にして9時頃に出発。


砂漠に咲く花が可愛かった。部屋の壁紙にしたい。

1時間ほど歩くと分岐に着きました。マウントホイットニーまで11.7マイル!本当によくこんなところまで歩いてきたな…。

お昼休憩に残りのフリーズドライを食べます。少しでも軽くしていきたい。

マウントホイットニーまで8.3マイル。ついに残り10マイルを切りました。ちょっとだけ寂しい。

クラブツリーのレンジャーステーションの分岐に着きました。ここにはポータブルトイレが置いてあり、1人1個持つことが必須です。私たちはヨセミテで貰ったものがあるのでスルー。

マウントホイットニー山域に入ると排泄物は持ち帰らなくてはいけません。標高が4,400mと高いので、分解されないのでしょうか。


私たちの様子を伺うマーモット。

ケイティたちと抜きつ抜かれつで歩きながら、ギターレイクに到着です。

ギターレイクからマウントホイットニーまでは水の補給場所がないため、ギターレイクがラストウォーターポイントとなります。が、夫のJMTアプリで見たところ、ギターレイクの上にも水場がありそう。

ギターレイクでケイティ夫妻と別れ、一段上の水場で水を持てる分だけ目一杯汲み、さらに上のテントサイトまで担ぎ上げました。結局テントサイトにも池があり、がっくり…。


ギターレイクはギターの形。

上のテントサイトには先客がいましたが、3張くらいできるスペースがあったのでトレイルに近い場所にテントを張りました。標高は高いけどフライシートなしに挑戦。


ホイットニーを眺めながら昼寝する夫。

夫が奥にテントを張っていたおじさんに話しかけに行き、どれがマウントホイットニーかと尋ねたところ、私たちのテントの正面がまさにそうでした。

彼の名前はブライアン。ホイットニーポータルにトラックを置いていて、下山したらシアトルまで帰るとのこと。「もし足がなかったらローンパインまで乗せてくよ!」と言って頂き、本当に会う人会う人優しい人ばかりだなと嬉しくなりました。

夜ご飯にピーナッツバターサンドを3枚食べ、テントに入ります。


マウントホイットニーを眺めながら仮眠。まだ明るい。

10時頃、近くで足音が聞こえてむくっと起き上がると、若いハイカーが水を汲みに来ていました。「何時に起きるの?」と聞かれ、0時かな〜と答えると、「早すぎない?俺は1時にする!」と言っていました。

緊張のせいかお腹がゴロゴロするので、ストッパ下痢止めを飲みました。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):15.6km


24日目(DAY138)JMT最終日

Guitar Lake上-Mount Whitney-Whitney Portal(17マイル/28km)

深夜0時起床。と言っても、興奮してほぼ眠れませんでした。

フライシートなしのメッシュだけのテントにして大正解。寝袋に入りながら、目を開けると無数の流れ星が見えます。
JMT最後の夜に相応しい、とても静かな美しい星空。

ホイットニー山頂付近を眺めると、すでに何個かヘッドライトの明かりが見えます。さあ、いよいよだ!

私がお湯を沸かしてご飯の準備をしている間に夫はテント内の片付けをし、二人で最後のフリーズドライを食べます。コーヒーも飲んで騒ぐ心を落ち着け、テントを撤収。

午前2時、出発です。

明るいうちにトレイルのチェックをしていなかったせいで、しばらくトレイルを見つけるのにウロウロしてしまいましたが、何とか合流。すぐにホイットニーポータルジャンクションへの登りが始まります。

寒さに凍えながらゆっくりゆっくり慎重に登ります。ヘッドライトの明かりが頼りで足元しか見えませんが、すぐ横は崖。石を落とさぬよう、静かに丁寧に足を運びます。高山病の心配もまだ捨てきれないので、水分補給と休憩をこまめにとります。

午前4時、ジャンクションに到着。
ここにザックをデポし、マーモット対策のためザックからベアキャニスターを取り出し、においのするものは全てベアキャニスターに入れてザックと並べて置きます。

準備をしているとケイティとブレンデンも到着。同じベースキャンプだったブライアンも小休憩して先に進みました。

午前4時半、アタックザックに水と防寒着と雨具、ナッツを入れて、サミットに向けて出発です。

さっきよりも険しい道になってきていますが、周りが暗いのでどのくらいの高さにいるのか、横がどのくらい切れ落ちているのか、あまり意識せずに登れました。とにかく星がどんどん近づいて来るような感覚でした。

午前5時半、少しずつ明るくなってきました。頂上まであと少し。いろんな思いが涙と一緒に込み上げてきて、あと10歩、あと9歩、と一歩一歩大切に心を込めて進みます。

「We made it!!」

両手を広げて頂上で待っていたケイティが抱きしめてくれた瞬間、自分でもびっくりするほど大粒の涙が溢れ出てきました。

標高4,418m。ヨセミテから340km。本当にしんどかったし長かった。私にとってはとてつもなく過酷な24日間だった。途中何度も無理なんじゃないかと弱気になったけど、そんな私でも頑張ってついにゴールできた。そして、今までの辛さがこの景色ですべて吹き飛んで行く。

JMTサウスバウンドのゴールはここマウントホイットニーの頂上。私たちのJMTは終わったのです。

放心状態の私に「もしかしてモモ…?」と横から声をかけて来たのは、MTR手前からずっと会えずにいたヨシュアとクリスティーナでした。

彼らは夜中のうちに山頂にアタックし、ここで寝袋に入りながら夜を明かしていたのです。久々の再会で嬉しすぎてみんなで抱き合い、お互いを称え合いました。みんな本当によく頑張ったね…!

朝日が顔を出し始めるにつれ、みんな最後のエネルギーを使い果たすくらいテンションが上がっていきます。あまり寝ていないはずなのに、一人一人の表情がキラキラと輝いています。

ケイティはユニコーンのコスチュームに着替え(JMT中ずっと担いで来たの…?)、家族とFaceTime。

昨晩ベースキャンプで声をかけて来たマイルズは、オレンジ色の朝日を見つめながら「It's time...!」と呟き、横に居た私に一眼レフを渡し、「撮影を頼む」と言って服を脱ぎ始めました。


周りから"brave man"と呼ばれた全裸のマイルズ。

ヨシュアとクリスティーナを撮影したらモデルが良すぎて何かの広告風になったり。

数時間前に出会ったブライアンももうファミリー。

全員が家族のように一つになり、抱き合い、喜びを分かち合った最高の朝でした。この24日間、雨は一度も降らず、熊にも遭遇せず、怪我も病気もせずにここまで来ることが出来たのは、運と友人に恵まれたこと、そして何より夫が支えてくれたおかげです。

マウントホイットニー頂上には小屋があり、小屋の前に記帳ノートがあります。私は出会えたハイカーやレンジャー、協力してくれた全ての人々に敬意を表しました。

JMTを終えて頂上を堪能した後は、ホイットニーポータルまでの長い長い下山が始まります。
標高4,418mから一気に標高2,545mへ。距離にして17km。

午前7時、下山開始。まずはジャンクションまで戻り、デポしていたザックを取りに行きます。

夜中に歩いた時は全く分からなかったけれど、とんでもない所を歩いて来たな…と急に怖くなります。

24日間を過ごしたシエラネバダ山脈を振り返ります。

なんて美しいんだろうか…。言葉になりません。

午前8時過ぎ、ジャンクションに到着。人も増え始めていたので、ある程度降りてから休憩をする事に。

ジャンクションからトレイルクレストまでは若干の登り。トレイルクレストからは残酷なほどの下りが続きます。

午前10時半、長いスイッチバックからの解放。あんな高いところから2時間かけて急斜面を降りてきました。ようやく休憩できそうな場所でコーヒーを入れます。


後から降りて来たケイティ夫妻も同じ場所で休憩。

JMTからの解放と、下で待ち構えている文明社会。頑張って降りるぞ!

深夜2時から歩きっぱなしのせいか、足首の痛みに加えて足がもつれ始めます。夫が先に降りている中、途中道を間違えて違うルートへ進んでしまって迷子になる私。
さらには小さな小川で滑って転び、全身びしょぬれ&肘から流血。最後の最後で何やってるんだろう…。

私が降りて来ないことに気付き途中で待っていた夫は、泥だらけ&血を流し、足を引きずりながら降りてきた私を見て「え…?」とギョッとしていました。

午後2時、ついにホイットニーポータルに到着!睡眠不足の中の7時間の下り、よく頑張った…!

グリルの外で待ち構えていたケイティ&ブレンデンと再会し、迷ったあげく転んだことを笑顔で報告。本業がナースのケイティが手当してくれました。

グリルにハンバーガーを買いに行き、コーラとビールで乾杯!JMTが終わったというのに、ケイティから「あんたたちのトレイルネームを考えたの!タロウは“ゴープロ”、モモは“バーガー”ね!」と言われました。ちなみにケイティは“フィッシュテイル”、ブレンデンは“ケアベア”、オマールは“タンク”というトレイルネームです。

ブライアンもテラスに来て、みんなでビールを飲みながらあれこれと思い出話。

その後、ケイティ夫妻にホイットニーポータル麓のローンパインという町まで送ってもらいました。ブレンデンは、「うちはすごい狭いんだけど、もし良ければ一緒に帰ってうちに泊まらない?」と言ってくれて、こんなに疲れて久々に家に帰れるというのに、なんて優しい人なんだと感動しました。
私たちはローンパインのホステルに山道具以外の荷物を送ってあったので、ありがたいけどホステルに泊まるよ、と言うと、「LAを離れる前に必ずもう一度会おう!」ということになり笑顔で別れました。

ホステルは古い建物と設備でしたが、個室を予約できていたため気を使わずにゆっくりできました。インデペンデンス以来のシャワーでしたが、思ったよりも身体は汚れていました。荷物も無事に受け取り、明日からは今まで以上に大荷物です。

ホステル向かいにコインランドリーがあったので洗濯をしに行き、スーパーでしばらく食べられなかったオレンジとアイスを購入。
その道すがら、ギターレイク手前で少し話したソロハイカーに遭遇。彼も同じホステルのドミトリーに泊まるそうで、しばらく立ち話をしました。

乾燥機に洗濯物を突っ込み、夕ご飯に中華料理屋へ。注文前に店員さんが「1つの皿がもの凄くデカいの。よほど大食でなきゃ1皿で十分よ!」と親切に教えてくれて、夫と1皿をシェアしました。本当にデカかった。

終わった実感はまだ涌かず、明日からもう歩かなくていいことが信じられないまま、効きすぎる冷房の中で就寝しました。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):28km

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私たちのJMT(ジョンミューアトレイル)⑪

21日目(DAY135)

Onion Valley Trailhead-Kearsarge Pass-Bullfrog Trail-Forester Pass 手前(11マイル/18km)

なぜかほぼ眠れなかったけれど6時過ぎに起床。もったいないので朝再度ホットシャワーを浴び、狂ったように頭をたくさん洗いました。

7時から朝食のはずが、朝食会場がわからないので誰か来るまで外のテラスでココアを飲んで待ちました。
昨日一緒のシャトルだったドイツ人の彼も、場所がわからないので一緒に待機。

さらにアメリカ人の若い夫婦もコテージから出てきて「朝食会場どこ?」と聞いてきたので、わからないからとりあえずここで待ってると伝えると、「この前吊り橋のキャンプサイトで会ったよね!」と言われ、軽く挨拶をしたことを思い出しました。

昨日シャトルバスの時間を教えてくれたおじさんも部屋から出てきて朝食会場を探していると、「Dinning Room」と小さく書かれた部屋を発見!

開けてみると、宿のお母さんがキッチンにいて、「好きな席に座って!」と朝食準備が整っていました。アメリカ人夫婦の部屋が分からなかったので、外で「Breakfast!」と叫んでみたものの、出てこない。ドイツ人の彼がお母さんに「みんな朝食会場がわからないみたいだよ」と伝えてくれて、お母さんがみんなを呼びに行き、無事みんな朝食にありつけました。

朝食は一つのテーブルを囲んでみんなで頂くスタイルで、ベーグル、卵、ベーコン、フルーツ、オレンジジュース、コーヒーと盛りだくさん!
ベーグルをトースターで焼き、バターをたっぷり塗ってジャムも乗せて食べている間にお母さんが卵を焼いてくれました。ああ、幸せってこの事だ…。

朝食での話題はヒッチハイク。
昨日シャトルにいなかったおじさんもアメリカ人夫婦もヒッチハイクで降りて来たようで、オニオンバレーでのヒッチハイクはそんなに難しくないようでした。

お腹いっぱい朝食を食べ、5分で出発準備。慌てすぎて食器洗い用のスポンジをキッチンに忘れました。

ベアバレルに入りきらなかった物資を寄付して、急いで待機しているシャトルに乗り込みます。

心身ともに本当に癒されたマウントウィリアムソンモーテル。心の底からありがとう!

オニオンバレーのトレイルヘッドに向かいながら、またあそこに登るのか…と気が重くなります。キラサージパスまで何時間で登れるかな…荷物も重くなったし、夕方くらいになっちゃうかな…。

トレイルヘッドに到着したのが午前8時半。トイレなどを済ませ、8時50分に出発。

ここから昨日鬼のように下った道を、また登り返してJMTに戻らないといけません。

ドイツ人の彼と、「本当に本当に登りたくないね。でも行かないとね…」と言いながら登り始めました。

あれ?何だろう。調子がいい。

昨日はフラットな道もやっと歩いていたのに、今日は登りもある程度のスピードでさくさく登れる。

あっという間にドイツ人の彼と距離があき、夫と二人、スイスイ登って行きました。

1時間に1回休憩を取り、ふんだんにある行動食を食べ、12時前にはキラサージパスのてっぺんに到着。なんと3時間くらいで登ってしまいました。


お口で溶けて手で溶けないm&m'sは、ザックの中で溶けました。

自分でもびっくりするほど体力が回復していて、昨日の下りよりもむしろ今日の登りの方が楽だったことに驚きました。ザックの重さも全然気にならない。昨日までは単純にガス欠だったのか…。

パスで10分くらい休憩し、ブルフロッグレイクまで一気に下りました。

午後1時過ぎ、ブルフロッグレイクに到着し、抜群の場所でランチ休憩。ついに私待望のピーナッツバターサンドを食べられます。

ガスも水もあるし、コーヒーを沸かしてパンにピーナッツバターをたくさん塗って食べました。目の前は美しい湖。幸せ…!

一緒の宿だったアメリカ人夫婦が追いつき、「いい場所ね!私たちもここでランチ休憩していい?!」と言うので、もちろん!おいでよ!と言って一緒にランチタイム。

二人はロス在住の夫婦で、ケイティとブレンデン。とてもハッピーな仲良し夫婦で、ランチにトルティーヤを作っていました。

気になったので近くでじっと見ていると、大きなサラミを1切れずつご馳走してくれました。めっちゃ美味しい…!そして物乞いみたいでごめんなさい…!

お返しに「松茸のお吸い物」をあげると、何だかすごく喜んでくれて記念撮影。

残り4日だけど、また楽しい仲間が増えました。
二人と「また後で!」と別れ、JMTのルートに戻ります。

少し行った所で女性のレンジャーが待機していて、「パーミットはある?」と初めての検問となりました。すぐにパーミットを渡すと色々とシートに書き写していたので、きちんとチェックしているんだなあと驚きました。

「日本から来たのね!素敵!もうほぼゴールじゃない!あとちょっとだけど楽しんで行ってね!」と励まされ、記念撮影。

ピーナッツバターサンドが効いているのか、いつもならバテバテの時間だけどまだまだ体力が残っているので、目的地のフォレスターパス手前のキャンプサイトを目指します。

夫が前を歩いていて、何かを発見した様子。

「あれ、オマールじゃない?」

よく見ると確かにオマールっぽい人がだいぶ前を歩いてる…!前に会った時と変わらずゆっくり自分のペースで、時折立ち止まり写真を撮りながら。

急いで近くまで降りていき、「オマール!」と声をかけると、「タロー、モモ!」と振り返るオマール。

お互い感動して抱き合って喜びました。嬉しい!オマール無事だった!

「もうすっかりゴールしてるものと思っていたよ、何でここにいるの?」と聞かれ、昨日はインデペンデンスに泊まったことを話しました。

なんとオマールはヨセミテから一度もリサプライをしておらず、全日程の食糧を担いでいたのです。すごい…!そんな人他にいるでしょうか…!

ゴール予定は私たちより1日後だけど、今日のキャンプ地は同じくらいになるかも、とのこと。

久々の再会を喜び少し立ち話した後、また後でね!と別れました。ずっと心配していたので、本当にほっとしました。

明日のフォレスターパス越えに向けて少しでも近づいておきたい私たちは、その後も抜きつ抜かれつ、みんな同じくらいのペースで歩みを進めました。


仲良く大集合して休憩。

自分たちでも体力の回復具合に本当に驚いていて、きちんとエネルギーを取る事の重要性を体感しました。(とは言え、MTRからオニオンバレーまではリサプライが出来ないので、多くの人はオニオンバレー手前で飢えと戦うことになると思う。)

ケイティたちは焚き火が好きなので、焚き火が出来る限界の標高でステイ。私たちはそこから1時間ほど登り、目的のキャンプサイトへ。

ベアロッカーもある開けた気持ちのいいサイトで、川もすぐ裏にあります。

設営後、川で顔を洗ったりしているとオマールが到着!手を振ると気がついたようで、彼もここにステイすることになりました。

夕飯のフリーズドライを食べ終わったくらいにオマールがご飯を食べにやってきて、彼がベアバレルを2個持っていることを知りました。だから全期間の食糧を運べるのかと納得。ただ、めっちゃ重そう…。

オマールはイスラエル出身。ビーガンで、ベアバレルには大量のビーガンフードが入っていました。
以前エステリーナの家で頂いたフムスやシャクシュカ、ファラフェルが美味しかったのでその話をすると、オマール特製水で溶いて作るフムスを伝授してもらいました。


見た目はあれだけどとても美味しかった!

なぜJMTスルーハイクを決めたの?と聞いてみると、LA近郊に住むオマールはヨセミテには度々ハイキングに来ていて、その際にJMTの道しるべを見て、「これは何だろう…?」と興味を持ったのがきっかけだと話しました。また、昨年はホイットニーポータルからトレイルクレストの分岐まで登ってJMTに入り、途中から違うトレイルに入ったそう。マウントホイットニーにはまだ登ったことはないけど、「今まで登ったどのパスとも勝手が違う」と言っていて、確かに最後はパス越えではなく登頂なんだ…、と思い出しました。

オマールと再会出来て本当に良かった。今日は本当にいい一日だったなあ。

  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):18.2km


22日目(DAY136)

Forester Pass 手前-Forester Pass-Bighorn Plateau(9.5マイル/15km)

ちょっと寝過ぎて7時前に起床。
テントを出るとオマールはもう起きていました。

朝ごはんに味噌ラーメン。一人で1人前を食べられる幸せ…!

今日は最後のパス、フォレスターパスを越える予定。
私の人生初となる標高4000m。色んな人からフォレスターパスはきつかったと聞いていたので、大ボスを攻める気持ちで出発です。

今日もさくさく進めるかと思いきや、昨日ほどの馬力は出ず…。やっぱり昨日は朝ごはんに卵とベーコンを食べたのが大きかったのでしょうか。1時間ほど歩いて休憩。

どれがフォレスターパスなのかなーと、いつも通り疑いの目で岩山を眺めながら歩きます。
丘が出てきましたがこれがパスなわけがないので、これを越えたらまた何か出てくるのでしょう。もう騙されない。

なかなか姿を現してくれないフォレスターパス。どんどん標高は上がっていき、今までのパスくらいの標高の3600mくらいまで来ました。


宿のフリーボックスからもらったピーナッツバターのクラッカー。美味しい。

かっこいい岩山がぐんぐん迫ってきます。もう少しでしょうか。


振り返ると美しく広がるシエラの風景。

ついにパスをロックオン!3700mを越え、酸素が薄くなっているのを感じます。

パス直下に来ました。降りて来たハイカーに、「トレイルは雪で隠れているからストレートアップして!」と言われました。パスに人がいるのも見えます。

息が切れないよう、焦らずにじりじり登り詰め、12時40分にパス到着!初めての4000mにテンションが上がります。

休憩しながら下を眺めていると、ケイティたちもすぐに上がってきました。二人とも無事にパスに到着し、ハイファイブ!

パスでお昼を食べようかとも思いましたが、コーヒーも入れたかったので下の水場まで降りてからランチ休憩することに。

南側の斜面はかなり急で、北側から登れて良かった…と思いながら下山。地球以外の惑星のようなこの風景も、もうあと2日で終わるのか…。

小川の近くまで降りてランチ休憩。今日もコーヒーとピーナッツバターサンドです。幸せ。

ケイティ夫妻も降りて来たので、明日の行程の情報交換をしていると、彼らはホイットニーポータルに車を置いているとのこと。明後日の下山時間が一緒だったらローンパインまで乗せてくよ!と嬉しいお言葉を頂きました。
ホイットニーポータルからローンパインまでは交通の便がないので、ヒッチハイクをする予定でした。とても助かる…!

明日はギターレイクまで行って、夜中にマウントホイットニーに登ってサンライズを見るという二人。私たちも、ギターレイクでフルの水分補給をしてマウントホイットニー直下まで行っておきたい。

なるべくギターレイクに近づけるよう、今日はもう少し歩く事にしました。

フォレスターパスからの道はため息が出るほど美しく、何度も足を止めてしまいます。ああ、本当にここまで来られて良かった。


ついにサインに「MT. WHITNEY」の文字が!感無量!

パスから5マイルほど下ったところをケイティたちはキャンプ地としていましたが、私たちはそこからさらに1時間ほど歩き、ビッグホーンプラトーという丘の上に小さな池があるとても美しい場所を発見。ここでキャンプをすることにしました。

設営をしてゆっくりしていると、オマールが前を通過。手を振ると、オマールもトレイルから離れてこちらにやってきました。
3人で景色を眺めながら、ここすごく良い場所だよね、と言うと、「ベストだね…!」と、ここを気に入ったようでテントを張っていました。


パックトレインに手を振りました。

テントからマウントホイットニーを含む山々が美しく眺められる最高の場所。タダでこんな場所でキャンプ出来るなんて本当に贅沢です。そしてインディペンデンスでのリサプライ以来なんでも幸せに感じる…!

私たちのJMT最後のパス、フォレスターパスを越えたお祝いにステーキのフリーズドライ。

向かいの池には動物たちが水を飲みに来たりして、いつまでも眺めていられる心地よい時間を過ごしました。



夫が夜撮影したシエラの星空。


  • 実際の歩行距離(iPhoneヘルスケア調べ):18km

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